
出張の午後に──
(大人向け恋愛小説風)
都内への出張の合間、久しぶりに彼女と会う約束をした。
静岡から東京へ。スーツケースをホテルに預けてから、待ち合わせ場所へ向かう。
朝の光がまだやわらかく街に差し込む頃、彼女は以前と変わらない落ち着いた笑顔で現れた。
少し痩せたような気もするが、雰囲気は以前よりも柔らかく、どこか大人びていた。
軽く食事をしながら、互いの近況をゆったりと語り合う。仕事のこと、家族のこと、趣味の変化。
どこか懐かしく、それでいて心地よい時間。沈黙すら安心できる関係は、そう多くない。
車に戻ると、ふと彼女がこちらを見つめた。
「ねえ、久しぶりにゆっくりしない?」
その一言に、思わず笑ってしまう。
わかりやすく、素直で、少し照れたその表情が妙に愛おしかった。
ホテルにチェックインすると、互いの距離が一気に縮まる。
触れ合う手のひらの温度、唇が重なる瞬間の静寂。
半年ぶりのぬくもりは、記憶よりもずっと濃密で、優しさに満ちていた。
午後はのんびりと休憩し、お風呂で温まりながらまた少し語り合う。
お互いに少しずつ、素の自分を取り戻していくような感覚。
やがて自然に再び身体が求め合い、心が溶けていく。
夕方のドライブでは、先ほどまでの時間を反芻するように感想を語り合い、
思い出話の中に笑い声がこぼれた。
ふと彼女が小さくつぶやく。「今日は、帰りたくないな…」
その言葉に応えるように、もう一度ホテルへ。
今度は少し遊び心を交えて、用意していた衣装に着替えた彼女は、
どこか恥ずかしそうにしながらも嬉しそうだった。
一緒にお酒を飲み、肩を寄せて他愛のない話を交わす。
照明を落とした部屋で、彼女は少しずつ素顔になっていく。
メイクを落としたその表情は、予想以上に美しく、無防備で、
思わず見惚れてしまうほどだった。
夜も深まり、最後のひとときをベッドの上で過ごす。
静けさの中で交わすキス。交差する視線。
そして、言葉のいらない時間。
心と身体が重なるたびに、過去の思い出も、今この瞬間も、愛おしさに包まれていく。
別れの時間が近づくと、彼女は小さく息をついた。
「また会えるよね?」
「もちろん。また、すぐに。」
夜景を眺めながら、彼女を送り届ける。
最後のキスは、優しく、どこか切ない余韻を残して。
──また、次の出張が待ち遠しくなる。